
火 力 発 電 所 跡 |
瀬戸内海に面した岡山市宝伝(ほうでん)の沖合2.5キロにある犬島。定期船で8分。周囲4キロほどの岡山市で唯一、人が住む小島だ。過疎化が進み今では人口60人足らず。古くから御影石の産地として知られ、大阪城や江戸城の石垣にも使われてきた。また、犬島の名前の由来は、菅原道真公が九州・大宰府に左遷される時、この付近で船が嵐に遭い、遭難しかかったが犬の鳴き声に導かれて難を逃れたという言い伝えから、とされる。今も、本島北西にある犬の島には、犬の形をした巨大な石をご神体とする「犬石明神」(通称・犬石様)が祭られている。
そんな古い歴史をもつ島は、明治期末から大正期にかけ、銅の精錬所として繁栄した。犬島精錬所の創業は、明治42年(1909)年。岡山の事業家・坂本金弥が、現在の倉敷市中庄にあった帯江鉱山を公害問題が起こったことから移転させたもの。大正2(1913)年には藤田組に売却、規模が拡大された結果、月300トンの銅を精錬、労働者も2千人が従事していたという。「犬島再発見の会」の在本桂子代表の話によると、「共楽館」という従業員用の娯楽施設が備わり、大衆芸能などが催されたほか港周辺では飲食店や旅館が立ち並び、殷賑を極めたいう。
しかし、銅価格の暴落、原料鉱石争奪の激化などから大正8(1919)年、わずか10年で休業に追い込まれ、住友合資に売却されたが、一度も再開されることなく今日に至った。
それから90年。煉瓦造りの6基の煙突群、鉱滓(こうさい)煉瓦=スラグで作った黒っぽい煉瓦=で造られた旧溶鉱炉の壁、火力発電所跡、積み出しの船着場跡、社宅跡の石垣などがかつての繁栄を伝えるよすがとなっているのみだ。朽ちた煙突、風雪を刻んだ煉瓦壁…これらが廃墟独特の雰囲気を醸し出し、これが魅力となって、これまでもTV「西部警察」、映画「カンゾー先生」「鉄人28号」のロケや野外劇の上演が行われたり、写真撮影の格好の被写体となっていた。
平成13(2001)年、ベネッセの福武總一郎会長が跡地を買い取り、敷地内に平成20(2008)年、犬島「精錬所」という名の美術館をオープンさせた。植物の力による水質浄化システムの採用など環境に留意した施設で、現代美術家の柳幸典氏が三島由紀夫邸の遺品を元に手がけた作品を展示している。新しいアートプロジェクトも近く始まる。犬島は今、新しい息吹を吹き込まれつつある。
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溶 鉱 炉 跡 の 壁 |

繁栄を誇っていた大正6(1917)年頃 (在本桂子さん提供) |

美術館・犬島「精錬所」 (撮影・阿野太一) |
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