2019年9月取材 失語症って何だろう?

 

 私が失語症を知ったのは、失語症者向けの意思疎通支援者養成講座の案内を見たことがきっかけです。失語症って何だろう。文字面で分かるようで分からない。ただ支援者の養成が始まるくらいだから、私が知らないだけで世の中にはたくさんの失語症の方がいるのではないかと取材を始めました。

 失語症は病気やけがで大脳にある言語中枢が傷つき起こる障害で、全国に50万人いると推定されています。言葉を“失う”と書くと、頭の中から言葉が消えてなくなってしまったように思えますが、それは違います。言葉は頭の引き出しにあるものの、それがうまく取り出せなくなっている状態です。舌や唇を動かすことに問題はなく、記憶や判断に関する能力は発症前と変わりません。

 ただ一口に失語症と言っても、損傷した場所や程度により現れる症状は異なります。そこが障害を理解する上で非常に難しいところだと感じました。以下は、NPO法人日本失語症協会のホームページより引用した症状の例です。

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話しことばでは、時計を見て“時間を見る物”であることはわかっているのに「トケイ」という名前が言えなかったりします。リンゴを「ミカン」と別の名前に間違っていってしまうこともあります。テレビのことを「タデビ」のように発音を言い間違えてしまう人もいます。

話しことばだけではありません。程度の差こそあれ、ほとんどの失語症者は、理解することの障害も併せ持っています。相手に長い文や早口で話しかけられて理解できなかったり、突然別な話題を話しかけられてついていけなかったりします。

また、文字も話しことば同様に障害される方がたくさんいます。一般的にカナよりも漢字の方がわかりやすいようです。

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