2019年10月取材 砂田夫妻との出会い

 

 失語症に興味を持った私は、岡山県で始まった失語症者向けの意思疎通支援者養成講座を取材し、ニュース番組で放送することにしました。取材にあたり失語症の方を紹介してほしいと、岡山失語症友の会に相談に行ったところ「絵日記を書きながら、リハビリを頑張っている女性がいますよ」とのこと。会報誌に掲載された絵日記を見せていただくと、まるくてかわいらしい字。一目で心が引かれました。

 後日開かれた支援者養成講座で、その方にお会いすることになりました。それが砂田真弓さんです。お会いしてみると、字から想像した通りの女性でした。一番不安だったのはインタビューです。ただ言葉が出てこないときにも、少し申し訳なさそうに、ニコっと笑う真弓さんの優しさに助けられました。

 もう一つ印象的だったことがあります。それは真弓さんが夫の一彦さんと会話をする様子。講座を受けている間のお二人はというと、耳元でこそっと話しては、にこにこ。メモを見せ合っては、にこにこ。まるで二人だけの世界にいるようで、なんて仲の良いご夫婦だろうと、何だかとてもうらやましく感じながら、その日の取材を終えました。

 翌日はご自宅に伺い、絵日記を見せていただきました。2013年から続く日々の記録はお二人の温かい気持ちであふれていました。私にはこの仕事をする上で大切にしていることがあります。それは、人のやさしい心を伝えること。ぜひこの絵日記について取材を続けたい!ニュースの取材後に送ったお礼の手紙は「いつか失語症の特番を作りたいと思っています。」と締めくくりました。